2021通常枠 鳥取県応募団体の公開

■応募団体の公開(鳥取県)

中国5県休眠預金等活用事業2021の公募にあたり、鳥取県では以下の3団体からの申請を受け付けました。(受付順に掲載/2022年2月25日公開)

 

鳥取藝住実行委員会(鳥取県鳥取市)

事業名:鳥取県立美術館整備を契機とした地域の内発的創造活動活性化のための体制づくり

(解決する課題の前提(背景))
 世界は課題であふれている。近代科学の発展により、人々が暮らしていくのに必要なエネルギー・食料・物資を、多くの人々が効率的に手に入れられるようになっているはずだが、一部の人々にとってはまだそれが困難であったり、利害の対立する人々の間での対立・戦争は絶えることがなく、生命を脅かすウィルスの蔓延や気候変動など、心配ごとを挙げればきりがない。 地域に目を転じると、他国で起きているような武力紛争こそ起きていないものの、少子高齢化、人口減少によって活力が失われ、昨今の新型コロナウィルス感染症の蔓延がそれに追い打ちをかけている、ように見える。
 鳥取は、人口減少・過疎化の先進地域であり、一般的に言えば、それらの課題も深刻であることは否めない。しかし、ここでの日々の暮らしとその未來は、それほど悲観すべきものではないのではないか。
 そのことを気づかせてくれたのが、2014年・2015年に鳥取県内各地で開催された「鳥取藝住祭」であった。そこでは、各地域の市民たちが、地域内外のアーティスト(芸術家)との交流を通して地域の価値に気づき、暮らしの中にアート(芸術)が得意とする創造的視点を取り入れることで豊かに暮らすことができること(これまでも実はそうしてきていた)を確信し、新たな営みも生まれ、育っている。
 鳥取藝住祭は、2015年度で終了したが、これに参加した団体(プロジェクト)が継続して交流を続け、地域の創造的な取り組みを進化・展開させるプラットフォームとして組織したのが、本事業申請団体の「鳥取藝住実行委員会」である。同実行委員会では、定期的な情報交換の場を設けると共に、ウェブマガジン「totto」の運営を通じ、創造的な取組の紹介と切磋琢磨を試みている。
 そんな中、鳥取県は、長年の懸案であった県立美術館(博物館から独立させる)を鳥取県中部の倉吉市に整備することを決め、2025(令和7)年春の開館に向けて準備を加速させている。言うまでもなく、美術館は美術をはじめとするアートの重要な拠点である。しかも、整備予定地の倉吉パークスクエアには、同じく県立の劇場施設である倉吉未來中心のほか、なしっこ館や倉吉市立図書館などの文化施設が集積する知の拠点であり、ここがアートを媒介とした創造性の涵養・醸成に大きな役割を果たすものと期待される。
 本事業は、鳥取藝住祭での気づきを基に、その後の5年あまりで継続・新生・展開してきた各地の取り組みを持続可能なものとし、県立美術館整備も一つの契機として、創造的な取り組みがさらに鳥取県内各地で多様に展開・発展させるために実施するものである。

(本事業で取り組む課題)
 前述したように、アートを媒介とすることで、地域で暮らす人々が足元や自身の魅力や創造に気づくことができ、生活を豊かにしていくことが可能であることが見えてきている。このように、人々が自信と活力を取り戻すことで、その他の様々な地域課題の解決に向かう意欲と力を取り戻していくことこそが必要なのではないかと考える。
 鳥取藝住祭は、このことに気づく一つのきっかけとはなったが、これを展開すべく活動している鳥取藝住実行委員会は基本的にボランティアベースの活動となっており、各団体のイベントの紹介やレポートに留まるなど、様々な限界・課題に直面している。
 行政としては、鳥取藝住祭の所管であった鳥取県・文化政策課が、同事業終了後もアートを活かした地域活性化のための補助金などで団体を支援しているが、団体同士を結び付け、あるいは新たな取り組みの芽を見出して支援するという機能までは果たせていないのが現状である。県立美術館整備局は、文化政策が所属する知事部局ではなく、教育委員会の所管であり、また、当面は施設本体の建築(ハード面)に注力しており、県民の創造性を育むという視点での事業内容の構想に関しては、これから本格的に着手しようという段階のようである。
 以上を踏まえた上で、当面取り組むべき課題は、これまでの活動の蓄積・成果を踏まえた上で、各プロジェクト自身がステップアップを目指すことができるように団体を支援していくことと考えられる。具体的には、以下のような点での支援が求められている。
・活動のアーカイブ(記録集)の作成
・成果を適切に評価し、新たな事業展開を構想できる人材の確保
・活動の意義を対外的に広報して支援者・協力者を増やす広報力・コミュニケーション力の育成
・活動を継続するための資金調達
 各団体が苦労をして活動を続けていても、その活動の本来の魅力や意義が対外的に十分に伝わらなければ、活動継続のための資金調達もままならず、したがって中長期の取組の継続が必要となる創造性の涵養という目的が達成されないままに、活動が停滞してしまう。
 そこで、本事業では、
①既存の団体を支援するための拠点と体制を整え、
②一定の活動実績のある団体のアーカイブ作成を支援し、
③それを踏まえて活動の意義を対外的にアピールする広報媒体を確立し、
④活動を継続・発展させるための資金調達を試みる。
 以上のような展開で、鳥取の創造的団体の活動を支援する仕組みを試行する。
 そして、あわせて、この中間支援的活動自体が持続的なものとなるような組織(鳥取クリエイティブプラットフォーム(仮称)の立ち上げを目指す。

 

NPO法人いんしゅう鹿野まちづくり協議会(鳥取県鳥取市)

事業名:地域の未来を変える空き家・空き地活用

『解決する課題』
1.コミュニティ・官民連携
・全国的に進行する人口減少・老齢化率の増加、特に中山間地域において活力創出が厳しい。
・社会的課題に対応するための活用可能資源(人・もの・金)の減少、空き家・空き地の増加。
・空き家・空き地の課題解決に向けた政策、活用等の官民連携が不足。
2.空き家・空き地活用
・空き家・空き地の資源化による地域活力創出を新たな仕組みにより進める必要性。
・ひとり親家族、子育て世代が住む場所を求めている状況に対して空き家の提供が出来ていない。
・官民が所有する地域の空き地活用に取り組む動きが見られない。
3.団体強化・学びと共有
・活動団体の基盤強化と後継者育成が出来ていない。
・鳥取県内の団体・行政において空き家・空き地の課題共有と活用等の協議・協働が出来ていない。
・活動団体が取り組む空き家・空き地対策や学ぶ機会の共有、情報発信が出来ていない。

『目指すべき姿』
1.コミュニティ・官民連携
・子供たちが帰りたくなり誰もが住み続けられる町、住んでいる人が楽しく多様なコミュニケーションがある町。
・地域の歴史・文化・コミュニティが豊かに継承され、子育て世代等が暮らす環境を整えられている。
・中山間地域にも適応するLB(ランドバンク)・CLT(コミュニティ・ランド・トラスト)的な新たな仕組みが動き出しており、鳥取県・全国へと拡散している。
2.空き家・空き地活用
・地域の空き家・空き地を課題から資源にして、多様な活用を生み出し地域の未来を変えることが出来ている。
・コンパクトハウス・リビルディングハウス事業が継続発展し、空き家・空き地利用に繋がり新たな事業への糧となっている。
・ひとり親家族の災害等避難場所・住まいの提供等の支援が可能となっている。
3.団体強化・学びと共有
・実行団体に様々な意見集約が生まれ、発展的な活動議論となって活動が強化されている。
・地域内外の団体・行政と地域課題の情報共有と協働が創出されている。
・活動が中山間地域の活性化と空き家・空き地対策のリーディングモデルとして市民・県民・行政等に認知・支持される。

『実施する活動』
1.コミュニティ・官民連携
・空き家所有者へのコンタクトに取り組み、所有者へ空き家の課題・活用を説明。
・官民協力して空き家予防行動を行う。予防へのPRと相談会開催。
・官民で空き家対策ミーティングを継続的に開催し、空き家対策計画を実現するための施策、事業、活動を協議。
・官民連携で鳥取LB・CLT研究会を立ち上げ、LB・CLT的空き家・空き地活用の新たな仕組みを研究。
・鳥取LB・CLT 研究会の検討内容を鹿野で実験的に取り組む。
2.空き家・空き地活用
・空き家活用セミナーを開催し、多くの人と共に先進事例、専門家から学ぶ。
・空き地を活かした子育て世代が暮らすコンパクトハウスの計画、実施、事業継続。
・空き家に残っているもの、資材をリユースするリビルディングハウスの構築と事業継続。
・ひとり親家族支援ハウスの実現と事業継続。
3.団体強化・学びと共有
・多分野、団体、休眠預金等の支援を得てより強く活動展開する組織づくり。
・実行団体内において他地域・他団体からの学びを共有し、活動議論を重ね活動に繋げる。
・多分野、他地域・団体とトークイベント等により情報共有・活動協議。
・活動をHP、SNS、広報紙等により情報公開し、可能な限り質問・相談に対応する。

『出口戦略(どのように活動を持続していくか)』
1.コミュニティ・官民連携
・空き家所有者へのコンタクトを継続的に取り組む
・相談会、情報発信などによる空き家予防への取り組み継続。
・地域の空き家賃貸、売却を進めるとともに防災上懸念のある空き家の自主的解体に協力。
・2030年鹿野町の空き家件数を、2020年の173ヶ所より減少している事を目指す。
・鳥取県、鳥取市との空き家対策ミーティング継続
・LB・CLT的研究、実験を基に、空き家・空き地活用の新たな仕組みを官民協働で事業推進。
2.空き家・空き地活用
・コンパクトハウス、リビルディングハウス、ひとり親家族支援ハウスの事業成長。
・空き家・空き地活用セミナー等でヒントを得た新たな活用をめざす。
3.団体強化・学びと共有
・NPO法人としての基盤強化と後継者育成、世代交代を進める。
・県内外において空き家・空き地活用に繋げるトークイベント開催継続
・活動をHP、SNS、広報紙等により継続して情報公開し、可能な限り質問・相談に対応する。

 

株式会社米子高島屋(鳥取県米子市)

事業名:介護をされたくない、介護をしたくない の実現

ア.解決する課題と目指すべき姿
 米子市の高齢化の現状は、住民基本台帳上の推移を見ると、65歳以上人口は、平成17年から令和2年(7月31日)の15年間で31,733人から42,700人へ10,976人(約34.6%)増加しており、要介護者も年々増加している。この要介護者の増加は、高齢者本人はもとより、家族への負担、企業の生産性、市財政の圧迫など、様々な分野に影響をもたらしており、健康寿命の延伸は大きな社会課題となっている。健康寿命を延伸するためには、健康状態から要介護状態への移行をできるだけ遅くする必要があるが、この中間の状態、いわゆる加齢とともに心身の活力(例えば筋力や認知機能等)が低下し、生活機能障害、要介護状態、そして死亡などの危険性が高くなった状態を「フレイル」という。
 このフレイルの状態を早期に発見し、健康な状態に改善し、介護状態になりにくくすることが重要である。現在、行政や一部の民間においても運動教室などの介護予防事業が実施されているが、参加する高齢者の多くが健康への関心が高い方であり、介入支援が必要なフレイル又はプレフレイル層へのアプローチができておらず、高齢者に対する介護予防への意識醸成が課題の一つとなっている。こうした課題を解決しながらまず、多くの高齢者が要介護者にならない生活を心がけ、社会の一員として生き生きと暮らせる地域を創生したいと考えている。また、元気な高齢者を増やすことは特に高齢化が進む地方の使命であり、地域経済の活性化や地域の活力創出にもつながると確信している。

イ.実施する活動
(フレイルチェック)
まずは介護予防について高齢者が自分毎として捉え、自分の状態を認識することが大切である。
そこで、米子市内の事業者が東京大学と共同開発したフレイルの進捗状況を見える化することができる診断システムASTERⅡを活用し、高齢者に自分自身の健康状態(フレイル度)を理解してもらう。このフレイル度は、厚生労働省が作成した「基本チェックリスト」による25項目の質問に対する回答をもとに診断するものであり、今回の実証事業では、JU米子高島屋における65歳以上の髙島屋カード会員及び友の会会員の組織顧客を中心に米子市及び周辺町村在住の高齢者を対象としてフレイルチェックを行う。
具体的には、JU米子髙島屋友の会会報誌やDM、新聞折込チラシ、米子市市報を通じて1回あたり1,500人程度の参加者を募り、参加者には事前に記入したチェックシートをJU米子髙島屋特設コーナーに持参してもらう。なお、できるだけ多くの高齢者に参加頂けるよう、サントリーの協力のもとで、参加者には脚の機能を維持するサプリメント「ロコモア」を無料提供する。
特設コーナーでは、米子市の指導員がヒアリングをしながらチェック項目等を確認の上、ASTERⅡに入力する。瞬時に出力される診断シートを手交しながら、診断結果の解説や生活上の留意点の指導、また必要な介入指導とサービス提供事業者の紹介などを行う。
また、参加者本人の同意を得て、お子様等のご家族に診断結果を郵送することで、高齢者本人だけではなく、家族で介護予防について考えるきっかけを提供する。
この取り組みを春と秋の年2回、3年間で合計6回実施することで、65歳以上の髙島屋の組織会員総数10,870人に加え、米子在住の高齢者も含めの10.000人の実施を目標とする。令和3年12月31日現在の米子市の65歳以上人口は42,988人であり、そのうち約9,000人が要介護者であるため健康又はフレイル層の高齢者数は約34,000人と推測できる。この実証事業の目的は介護予防への意識啓発であるが、昨年10月に発足したフレイル対策協議会(2月より株式会社米子髙島屋も参画)や鳥取県西部歯科医師会、米子市などの関係機関が連携して、フレイル診断の取り組みに関する情報(個人情報についてはご本人の同意を得た上で匿名化)を共有しながら、介入指導サービスの拡充や口腔治療、相談体制の確立など介護予防の仕組みを作ることとされており、こうした動きとも連携を図りながら実施していく。
 また、今回の計画では目標人数を10.000人としており、米子市の対象高齢者数全体の4分の1程度にとどまるため、様々な機会をとらえて今回参加されない高齢者に対しても情報発信を行い、より多くの高齢者の意識改革や行動変容につながるよう努めていく。
(地域経済への影響分析)
このフレイル予防の意識啓発事業を株式会社米子髙島屋が実施する大きな理由の一つは、地域の購買力を担う主要顧客であるとともに、今後も増加していく高齢者層に引き続き元気で楽しく買い物をしてもらうことで地域経済を維持していく必要があるということである。このためフレイル度に応じたグループの近年の購買動向の変化を分析することで、フレイル度の進行と購買額の因果関係の有無などを把握し、その結果をJU米子高島屋はもとより、角盤町商店街の集客対策に活かし、地域経済の活性化にも貢献したいと考えている。

ウ.出口戦略(どのように活動を持続していくか)
まずは今回米子髙島屋が主体となってJU米子髙島屋顧客を中心とした実証事業として取り組むが、4年目からは米子市の事業として引き続き実施していく予定である。

 

選定に向けて

中国5県休眠預金等活用コンソーシアムでは、応募いただいた団体へのヒアリングを実施し、申請書類およびヒアリング内容をとりまとめ、外部有識者からなる審査委員会へ提出いたします。
審査委員会では申請書類の確認が中心となる事前審査と審査会の2段階で申請案件の審査を行い、各案件の審査結果を中国5県休眠預金等活用コンソーシアム運営委員会に報告いたします。
審査委員会からの報告を踏まえ、運営委員会が内定団体を決定いたします。(2022年4月頃決定予定)